こころ、ふわり


私が教室へ戻ると、休み時間の終わりを知らせるチャイムが鳴り響いた。


次の授業は現代国語だったので、教科書とノートを出して席につく。


すると、教室に入ってきたのは噂の玉木先生だった。


私のいるクラスの国語の担当は、いつもは40代の女性教師だったからみんな不思議がっていた。


「今日は後藤先生が体調不良でお休みなので、代わりに私が来ました」


玉木先生は少し緊張したようにそう言って、かたい笑顔を私たちに向けた。


「このクラスに来るのは初めてですね。玉木恵です」


よりによってさっき話していた玉木先生が来るなんて、びっくりしてしまった。


すると、前の席の若菜がひょいっと後ろにいる私の机に身を乗り出して


「噂をすれば、だね!」


とニヤニヤと笑みを浮かべた。


玉木先生は笑顔が可愛らしくて、さすが新卒の先生というだけあってフレッシュ感もさることながら、拙い授業の進め方も彼女らしさが出ていた。


時々、黒板に書く字を間違えたりしていて、生徒に指摘されると


「ご、ごめんなさいっ!私ったら本当にダメだね」


と慌てて恥ずかしそうにしたりして。


同性の私から見ても、なんというかほっとけない感じで、こういう人って意外とモテたりするんじゃないかと思ったりした。


< 533 / 633 >

この作品をシェア

pagetop