こころ、ふわり


そつなく授業を終えた玉木先生は、休み時間に入る前に後藤先生に解いてくるように言われていた課題を回収して束になったノートを両手に抱えながら教室を出ていった。


彼女が教室を出た瞬間に、ものすごい音がして若菜と顔を見合わせた。


「もしかして……課題ばらまいた?」


若菜が笑いをこらえたように私にそう言ってきたので、2人で廊下を覗いてみることにした。


想像していた通り、玉木先生が回収した課題の山を見事に廊下に散らばしていた。


「大丈夫ですか?」


と声をかけて私と若菜はすぐに玉木先生に駆け寄って課題のノートを積み直していると、玉木先生は申し訳なさそうにガックリと肩を落とした。


「ごめんね。私、ほんとにドジで……。気をつけてるつもりなんだけど、こうやって物は落とすし転ぶし……」


「先生、そういう人って男にモテるよね」


若菜がニヤッと笑って最後の課題ノートを積み上げる。


玉木先生はあせったように何度も首を振って否定していた。


「そ、そんなわけないでしょっ!モテたことなんて無いから!」


全力で否定したあとは、課題をもう一度両手に抱えて「手伝ってくれてありがとう」と私たちに言って、廊下をヨロヨロと歩いていった。

< 534 / 633 >

この作品をシェア

pagetop