こころ、ふわり


そのまま戻ろうとする芦屋先生に、玉木先生が声をかける。


「あ、あのっ、芦屋先生」


芦屋先生が振り向く。
その顔が一瞬にして驚いた表情に変わった。


私の隣にいたはずの玉木先生が、階段を踏み外したらしく前のめりになっていた。


課題をかばおうと両手で抱え込む玉木先生の体を、私はとっさに支えようとした。


私の手からバラバラと課題ノートが落ちる。


玉木先生の体を掴んで安定させたと思ったのもつかの間、その反動で私の体がバランスを失ってしまった。


このまま階段から落ちて、また怪我しちゃうんだ。


と思っていたのに、私の体はどこも痛みを感じることが無かった。


あろうことか、芦屋先生に体をキャッチされていた。


おお〜っと周りにいた数人の生徒から拍手が送られる。


芦屋先生の顔が思ったよりも近くて、私は慌てて先生から体を離すと


「す、すみません!」


と謝った。

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