こころ、ふわり
私もありがとうと言わなきゃ。
芦屋先生に助けてもらったんだから。
でもここで声をかけたりしたら、妙だと思われるだろうか?
色々なことを考えているうちに、芦屋先生が行ってしまいそうだったので
「芦屋先生」
と私は呼び止めてしまった。
「ありがとうございました。た、助けてくれて……」
うまく言えたのかどうか、自分でもよく分からなかった。
ただ、振り返った芦屋先生がいつもみたいに微笑んでくれたから安心した。
そんな私たちを、玉木先生がじっと見ていることなんて気づきもしなかった。
「吉澤さん。ここまでで大丈夫。ありがとね」
と、玉木先生に言われて私は首を振った。
「いえ、職員室まで運びます」
「ううん。もう平気だから」
半ば強引に私の手から課題を奪うように取り上げた玉木先生は、またフラフラしながら廊下を歩いていってしまった。
取り残された私は、しばらく彼女の後ろ姿を見送ったあとまた階段をのぼって教室へ向かった。