こころ、ふわり
そういえば、今は体育の授業中で、そしてバスケットボールの練習中だった。
「こら、吉澤!ボーッとするな!」
と、高野先生の笑い混じりの声でハッとして、すみません、とボールを拾う。
強いパスを顔面で食らったのに、倒れもしない自分にびっくりしてしまった。
「萩、ごめーん。大丈夫だった?」
バスケットボールを当てたのは澪だったらしく、とてもすまなそうに私に駆け寄ってきた。
「気にしないで。考え事しちゃってた」
私が笑ったからか、澪は少し安心したように微笑む。
徳山先生との関係が学校に知られて、謹慎処分を受けた澪は、新学期が始まった頃はクラスでそのことをネタにして笑う子たちがいたけれど、あれから3ヶ月ほど経過して、噂はほとんど収束に向かいつつあった。
澪のことを指差して笑う子もいないし、何かコソコソ話をする子もいなくなった。
噂はいつか消えるというのは本当なのかもしれない。