こころ、ふわり


私のあからさまな態度は明らかにいつもの私と違っていたようで、さすがの若菜も気づいたらしい。


澪と食堂から戻ってくるなり、私の席にやって来て机をトン!と叩いた。


「萩?正直に答えて?」


「…………は、はい」


さっきまでの怒りはどこへやら、私は縮こまって息が詰まる思いだった。


「まさかとは思うけど、萩の好きだった人って……振られたって言ってた人って……」


わなわなと震える若菜の隣で、澪が心配そうに見守っている。


もう隠しようもないし、このまま若菜にだけ黙っているのは気が引けたので認めることにした。


「お察しの通りです」


私が言い放った一言は、若菜にとっては信じがたい言葉だったようだ。


目を大きく見開いて瞬かせ、グッと私との距離を詰めるととても小さな声で


「芦屋先生なの?」


と確認された。


うなずいた私から体を離した若菜は、今度は澪に確認する。


「嘘でしょ?本当なの?知ってたの?」


「私は前から知ってたの。萩が嘘つくわけないでしょ?」


呆れた物言いの澪を尻目に、若菜だけがあせったように私に両手をついて謝っていた。


「ご、ご、ごめん!私、知らなくて……。今まで散々、その人の愚痴とか、かっこよくないとか、変な人とか、そんなんばっか言っちゃってたよぉ」


若菜の慌てようと反省しきった態度を見ているうちに、だんだん面白くなってきてしまって、思わず吹き出す。

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