こころ、ふわり


澪の言葉を聞き逃さなかった若菜は、「徳山先生はそういうことするの?」と興味津々になっていた。


2人のやり取りを聞きながら、私はさっきまで怒っていた自分を反省する。


怒ったって意味なんて無い。
私にはどうすることも出来ないのだから。


虚しい気分になりながら、ため息をついた。











放課後になり、部活に行く前にと思って屋上へ向かった。


天気のいい日のお昼休みや休み時間は、多くの生徒が集まる場所だ。


でも放課後はあまり人が来ないから、考え事をするにはちょうどいい場所でもある。


生暖かい風に吹かれながら、梅雨の訪れを感じずにはいられなかった。


「萩」


ふと声をかけられて振り向くと、真司がいた。


すでにジャージに着替えていて、これから部活に行くといった出で立ちだった。


「元気ないじゃん」


真司はそう言って、私の隣までやって来た。


「色々あって。ちょっと一人になりたくて」


「俺がいたら邪魔?」


「ううん、そんなことないよ」


私が首を振ると、真司はニコッと笑った。


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