こころ、ふわり


「お前のこと、ずっと見てたから分かるよ。何考えてるのかくらい」


「そんなに分かりやすいかな、私……」


隠してるつもりなのに、真司にはすべてバレてしまっているということなのだろうか。


「分かりやすいっていうか、素直なだけ」


真司は訂正するようにそう言って、屋上のフェンスに背中をつけて息をついた。


「もうここ最近、お前の顔いつ見ても悲しそうで。笑ってる顔すらも寂しそうで。そうさせてるのはあいつなんだよな」


「ち、違うよ!私……、私のせいで」


言い返そうとした私を、真司はシッと人差し指を立てて黙らせると


「逆もそうなんだ。お前に幸せそうな顔をさせることが出来るのもあいつでしょ」


と言った。


「俺じゃなくて、芦屋先生」


念を押すようにつぶやいた真司は、優しく微笑むと私の肩をポンと叩いた。


「諦めるって宣言するわけじゃないけど、菊江の次くらいにお前の理解者ってことにしてもらえれば、もうそれでいい」


「理解者?」


「そう、理解者」


真司の「理解者」という言葉を、私は受け止めた。


そういえば、いつも心配そうに私のことを見守ってくれてたんだっけ。


何かあれば「どうした?」って声をかけてくれていた。


「好きな人には幸せになってほしいってことだ」


私の心の中に、真司の言葉が丸ごと吸い込まれていくようだった。


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