こころ、ふわり


その後、夏休み前に控えた弓道の大会に向けて熱の入った練習が続き、勉強の方も受験生として自覚を持った取り組み方になっていた。


週に1回の美術の授業ではあの日以来、芦屋先生と目が合うことは無かった。


でも、先生のシャツには私があげたボールペンがいつもささっていた。


それを見るたびに、無性に先生に恋をしたくなる。


そんな気持ちを隠して、私も先生と同じように目を合わせないように、何事もないように心がけた。


毎日毎日、朝は早起きして部活の朝練習に参加して、夜は下校時刻ギリギリの遅くまで練習して帰る。


帰ってからは自宅の机にかじりついて定期試験の勉強。


机の引き出しの一番上に、芦屋先生からもらったネックレスとストラップを小さな箱に入れて保管していた。


外した日以降、その箱を開けることは無かった。


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