こころ、ふわり
「勝手にこんなことをして悪かった。君の出番が終わったら帰ってしまったけど……」
少しすまなそうに肩をすくめる徳山先生に、私は首を振って笑いかけた。
「試合中、姿を見かけました。連絡してくれてありがとうございます……。来てくれただけでも、夢みたいです」
本当は芦屋先生にもお礼を言いたかったけれど、きっともう目を合わせて話すことなんて無いだろうから。
だから、来てくれたということだけで幸せだった。
「ねぇ、萩……。あのさ」
澪が何かを言いかける。
それを徳山先生が肩をつかんで止めていた。
2人の様子がちょっと変だったので、追求しようとしたところへ菊ちゃんのお母さんが割り込んできた。
「萩ちゃーーーん!お疲れ様!」
「あ、お母さん!ありがとうございます」
私が元気な菊ちゃんのお母さんに押されているうちに、澪は笑みを浮かべてさっきの言葉を飲み込んでいた。
いったい何を言いたかったのだろう?
私には検討もつかなかった。