こころ、ふわり


この日をもって、私たち3年生は弓道部を引退した。


菊ちゃんだけは夏休み中も練習に参加して、県大会に出場する。


今度は菊ちゃんの応援に駆けつけなくちゃと思った。


夜は3年間部活お疲れ様ということで、とても美味しいコース料理のフレンチを両親にごちそうしてもらい、満たされた気分でベッドに潜り込んだ。


体はすごく疲れていたけれど、頭は冴え渡っていた。


今日の試合を、芦屋先生が見に来てくれたことを思い出していた。


マスクなんてして、変装してるつもりだったのかな?


そういえば、付き合っている時は私の変装姿を見ていつも笑ってくれてたな。


私にばかり変装させるのも悪いからと、先生も一緒に変装してくれたこともあった。


今日、私の試合を見に来てくれたのはどうしてなのだろう。


前に怪我をした時、試合に出られなくて悔しくて泣いたから?


ただ単に徳山先生に誘われたから?


それとも━━━━━。


ここまで来て、私は目を閉じて考え直す。


もう期待なんてしない。
別れを告げたのは先生の方。
私が告白しても何も言わなかったのは先生。


私たちは先生と生徒だから。
それ以上でもそれ以下でもないんだから。


言い聞かせるように心の中でつぶやいて、眠りについた。









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