こころ、ふわり


私が部活を引退してから数日が経った。


夏休み直前におこなわれた三者面談で、星先生に理学療法士になるために専門学校へ行きたいと話をした。


私の成績でちゃんと通えるのか心配していたお母さんをよそに、星先生はとてもあっけらかんと笑っていて


「吉澤さんの成績なら学校推薦は間違いなく通るし、専門学校の推薦入学は面接がメインになるからおそらく問題ないでしょう。面接の練習はもちろんしっかりしますから、安心してください」


と、あっさり太鼓判を押された。


よかったよかった、と胸をなで下ろすお母さんの横で、私もひっそりとホッとしていた。


理学療法士の勉強が出来る医療系の専門学校は県内にあるので実家からも通えるし、県外に出て一人暮らしなんてことにならなくて済んだから良かった。


すると冗談交じりに星先生が


「推薦って素行に問題のある生徒は基本的に外されちゃうんですよ。吉澤さんは真面目だからそういう点では問題ないから大丈夫ですね」


と言っていた。


私が仲良くしている澪のことを皮肉っているのかそれは分からなかった。


でも、芦屋先生がしきりに私の将来を案じてくれていたことを思い出して、少し切なくもなった。


きっと今まだ付き合っていたなら、こういう話は落ち着いて聞いてられなかっただろうから。


芦屋先生は、そういうことを見越していたのかもしれない。

< 583 / 633 >

この作品をシェア

pagetop