こころ、ふわり


「前は意地悪なこと聞いちゃってごめんなさいね」


と玉木先生が言い出してきたので、私は思わず「え?」と聞き返した。


彼女が言う「前」というのは、職員用の玄関で遭遇した時のことだろうか。


「芦屋先生に聞いたの。全部」


その言葉を聞いた途端に、ドックンドックンと心臓が不安の警鐘を鳴らし始める。


いったい何をどう聞いたのか、とても気になった。


私と付き合っていたことを話してしまったのだろうか?


玉木先生はフーッとため息をつくと、伏し目がちに、そして自嘲気味に笑った。


「芦屋先生の一方的な片想いだったんですってね?あなたはずっと断り続けてたって聞いて、なんだか納得しちゃった」


「……………………え?」


耳を疑った。


芦屋先生の一方的な片想い?
どういう意味?


私に片想いしてたってこと?
しかも私が断ってたってこと?


どうしてそうなっているのか、さっぱり分からなかった。

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