こころ、ふわり


若菜が言ってくれたことは嬉しかったし、いつもの私なら強く期待してしまっていたと思う。


でも、やっぱりあの時のことは忘れられなくて。


好きだと言っても、キスをしても、先生は何も言ってくれなかった。


応えてはくれなかった。


私がお願いした、萩と呼んでほしいということだけを叶えてくれた。


あの時、どうして先生は悲しくてつらそうな顔をしたの?


どうして私の試合を見に来てくれたの?


歓迎会の帰り、どうして私の名前を呼んだの?


どうして、どうして、どうして、と考えていると、息が詰まりそうになる。


もしも卒業したら、私は本当に先生以外の誰かを好きになれるのかな。


いつかこの恋も思い出になって懐かしむことが出来たらいいけれど、今はまだ無理そうだ。


若菜は私が泣いていると思ったのか、体を起こして心配そうにこちらを見ていた。


「萩、大丈夫?ごめんね、私が変なこと言っちゃったから」


「ううん。いいの」


泣きそうになったことは何度もあったけれど、先生に気持ちをすべて伝えてから涙をこぼすことは無かった。


少しは強くなれたかな、と自分でも思う。


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