こころ、ふわり


澪の提案に、若菜も真剣な表情で私を見ている。


私は2人の視線を一手に受けながら、何度も首を振った。


「ご、ごめん。それは出来ないよ……。さすがにしつこくて嫌われちゃうと思うし……」


「萩、そんなこと言わないで」


なぜか澪の方が泣きそうな顔になっていて、もはや頼み込むくらいの眼差しで私に詰め寄る。


「本当は芦屋先生も萩のこと好きなんだよ。萩たち、ずっと両想いのまま変わってないんだよ」


「やめてよ……そんなのなんで分かるの?本人に聞いたわけじゃないでしょ?これ以上頑張れないよ」


さっきまでの澪たちを祝福する気持ちが消えそうで怖くなる。


もう何も聞きたくないとまで思った。


「本人に聞いたんだよ」


と澪がつぶやいた言葉を、私はすぐに理解することが出来なかった。


「え?」


呆然とする私より先に、若菜が少し驚いたように目を見開く。


「ほら!思った通りじゃん!私も2人は両想いなんじゃないかって思ってたよ」


「嘘だよ。信じられないもん」


反論しながら、自分の手が緊張で冷たくなっていくのが分かって胸が苦しくなった。


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