こころ、ふわり


資料室のドアが開いた先に見たもの━━━。


それは、まったく予想していなかったものだった。


お化けでもなんでもない。


室内に2つの人影。


暗くても分かった。
男の人と女の人が抱き合っていたのだ。


もしかしてキスをしていたのかもしれない。


薄明かりの廊下の電気に照らされてぼんやり浮かび上がる、2人の顔。


徳山先生と、女子生徒だった。
2人とも目を丸くしてこっちを見ている。


私も芦屋先生も、驚きすぎて声が出ない。


唯一、女子生徒が「キャッ」と小さな悲鳴を上げたくらいだった。


徳山先生と女子生徒はパッと体を離す。


私はその女子生徒に見覚えがあった。
昨日の夜、菊ちゃんと帰るときに見かけた徳山先生と恋人らしき女の人。


彼女はまさに、その人だった。


徳山先生は生徒と付き合っていたのだ。

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