こころ、ふわり
「萩、実行委員頼まれた?」
「菊ちゃん!」
菊ちゃんの顔を見た瞬間、星先生になぜ私を推薦したのか問いただそうと思った。
ところが彼女は私を制止するように両手を顔の前で広げた。
「分かる。分かるよ?大丈夫、ちゃんと理由あるから」
「え?理由?」
「ちょっとこっち来て」
菊ちゃんは聞かれては困る話をするかのように、私を教室の隅へ引っ張っていく。
そして小声で、
「修学旅行の実行委員会のこと星先生に詳しく聞いたら、芦屋先生も参加するって聞いたの。だから、きっと萩がやりたがるかなぁって思って」
と私に言った。
「そ、そうだったの……」
芦屋先生も修学旅行に来るのか、と心の中で嬉しくなってしまった。
「ごめん、余計なことしちゃった?」
心配そうにこちらをうかがう菊ちゃんに、私は急いで首を振って見せた。
「ううん、ありがとう。嬉しい」
「よかった~」
ホッとしたように肩を落とした菊ちゃんは、チラッと真司の方を見ると
「真司はバカだから、都合よく萩と組ませてくれたって勘違いしてそうだな」
とつぶやいた。
「なにが?真司がどうかした?」
「あ、ううん。なんでもない。こっちの話」
真司についての話は、菊ちゃんは詳しく教えてくれなかった。