こころ、ふわり


私と真司の前が空いているから声をかけようかな。


などと思っていたら、徳山先生が立ち上がって芦屋先生を手招きしているのが見えた。


私の心がざわめく。


芦屋先生は笑っているような、困っているような、なんとも言えない複雑な表情を浮かべて徳山先生の後ろに座った。


昨日のことがあってから、2人は職員室などで何か話したりしたのだろうか。


じっと先生たちの様子を見つめていると、どこからか視線を感じた。


振り返ると隣に座っている真司が私を見ていたようだ。


「さっきから誰を見てんの?」


ちょっと冗談めいた感じで、真司が尋ねてくる。


さっきまでグランドばかり眺めていたくせに、どうしてこういう時にそんなことを聞いてくるのか困ってしまう。


「誰とかじゃなく、教室全体を見てたんだよ」


その場しのぎの答えを口にすると、真司は首をかしげて


「へぇ~、先生じゃなくて?」


と、さらに突っ込んできた。


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