こころ、ふわり
まさかとは思うけれど、真司は何かに気がついている?
私が芦屋先生のことが好きだと気づいてるとか?
いや、真司に限ってそれはない。
私のことなんて大して興味がないだろうし、きっとまた何かからかう材料を探しているのだ。
「どうだっていいでしょ」
真面目に答えるだけ無駄だと思い、適当にあしらおうとした。
でも、今日の真司はなぜか食い下がる。
「お前いっつも誰かのこと見てるよな」
「見てない」
「見てるよ。バレバレだし」
いったい何を言いたいのか。
私の好きな人が芦屋先生だと知っているような口ぶりだったから、なんだか怖くなってしまった。
「やめてよ。この話はおしまい」
真司にそう告げたと同時に、学年主任の高野先生が実行委員会の話し合いを始めるように教卓へ出てきて仕切り出した。
生活指導の高野先生は男の先生で、体も大きいし、顔も怖い。
私と真司はそれきり、言葉を交わすことは無かった。