こころ、ふわり


私の怪我に気づいたのか真司は珍しく心配してくれた。


「手首、大丈夫か?」


「え、あ、うん」


いつもと違うからちょっと戸惑いつつも、心配をかけまいとうなずいた。


「少し捻っただけだから。ありがとう、心配してくれて」


「おはぎのことだから、どうせ何もない平坦な場所で転んで捻ったんだろ?」


「え!?ちょっと、そんなワケないでしょ!」


彼の本意が私を心配しているのではなく、やはりからかいに来ていたのだとすぐに分かった。


「もう!他にやることないの?陸上部の練習サボってまで私をからかわないでよ」


「休憩中だもんね」


ムキになる私を軽く交わすようにそう言った真司は、鼻歌を歌いながら来た道を戻っていった。


あんな性格なのに短距離走で県大会で入賞するくらい足が速いので、学校内ではそこそこ女の子に人気があるらしい。


私には彼の良さがまったく理解出来なかった。

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