こころ、ふわり


「真司、お願い」


私は恥ずかしい気持ちを隠すように目をつぶった。


「誰にも言わないで」


「言うわけないだろ」


真司は意外にも即答でそう言ってくれたので、私は拍子抜けして目を開けて彼を見た。


彼のことだからクラス中に言いふらしたりするんじゃないかと思ったけれど、そこまで鬼じゃないということか。


ホッと胸をなでおろしたのもつかの間、真司は私を少し責めるような言い方で


「お前さ、あいつが先生だって分かってるだろ?好きになったって意味無いじゃん。生徒としか見てないのに」


と言った。


その強い口調にムッとしてしまった私も、少しいつもよりヤケになってしまった。


「ちゃんと分かってる。いいの、片想いで」


「相手にされるわけないし、生徒だから優しくしてくれてるだけだ。勘違いすんなって」


「全部分かってるもん!なんでそこまで言われなくちゃいけないの?ひどいよ」


真司がこんなに冷たい言葉を言ってくることなんて今まで無かった。


冷やかしたり、からかったりしてくることはあってもいつも笑顔でその場を楽しませるような感じだったのに。


こんな一面もあるのだと知って困ってしまった。


真司はそこで何かを言いかけて、すぐにやめた。


そして、一言だけ


「先に行く」


と私に言うと、走って廊下を行ってしまった。


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