こころ、ふわり


これから約半年、修学旅行の実行委員として一緒に頑張っていかないといけないというのに、こんなギクシャクするようなことが初日に起こるとは思っていなかった。


私はしばらくその場に立ち尽くしたあと、ゆっくり歩き出した。


歩きながら、真司の言葉が頭をぐるぐると駆け巡る。


「生徒だから優しくしてくれてるだけだ。勘違いすんなって」


そうなのだ。


芦屋先生が優しいのは、私が彼の生徒だから。
それ以外なにもない。


私が芦屋先生の生徒じゃなくなったら、何も残らない。


他の生徒にもしていることを、私にもしてくれているだけ。


そんなの分かっていることではあったのに、いざハッキリ言葉にされたらなんだか切なくなってしまった。


私はこの時、真司との会話を影で聞いていた人がいることには、まったく気づいていなかった。











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