こころ、ふわり


部活の練習も終わり、いつものように私と菊ちゃんは袴から制服に着替えて帰る支度をしていると


「上田先輩、少し時間ありますか?」


と、2人の後輩が菊ちゃんに話しかけた。


2人はどうやら、菊ちゃんに弓道の練習について色々と聞きたいことがあるらしかった。


「あ、うん。いいよ」


菊ちゃんは快くうなずいて、私に申し訳なさそうに


「萩、ごめん!今日も先に帰っててもらっていい?」


と言ってきた。


「うん、分かった」


菊ちゃんは副部長だし、こうやって後輩に頼られる場面がだんだん増えてきていた。


私は菊ちゃんと後輩2人に「また来週ね」と声をかけて、弓道場をあとにした。


弓道場を出てすぐにグランドから見える渡り廊下に目を向けてみる。


芦屋先生はいなかった。


昨日あそこにいたからといって、今日もいるとは限らない。


もう帰ろう。


私は校舎に入り、玄関口で靴を履き替えた。


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