こころ、ふわり


相川澪だった。


彼女は凛とした雰囲気を身にまとっていて、私には無いものをたくさん持っているような気がした。


「吉澤萩」


彼女は私の名前を呼んで、ニヤッと笑った。


「あんたと話がしたくて待ってたの」


「は、話……?」


堂々とした態度で話しかけてくる彼女に、なんとなく圧倒される。


「昨日のこと。あんな風に他人のキスしてるところ覗くの趣味なの?」


こんなことを言われるとは予想外だったし、覗いたと思われているのも心外だった。


「違うよ。だって誰もいないはずの部屋から変な音が聞こえたから……」


「じゃああんたは芦屋先生と何してたの?同じことしてたんじゃないの?」


「し、してるわけないじゃない!」


自分でも驚くくらいの大きな声で全力で否定してしまうくらいの焦りように、彼女は声を上げてケラケラ笑った。


「でしょうね。あー、面白い」


どうしよう。
私……この子が苦手だ。


私は呆然と相川澪を見つめることしかできなかった。


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