愛想人〜アイオモイビト・幼なじみ〜
翌日、いつものように魁迩と登校した。
下駄箱のところで靴を履き変えていると毎朝恒例になりつつある、絢が抱き着いてきたのだ。
「おはよー、梨羽」
あたしの腰に手を回して耳元で囁く絢。
いつものことなんだけど昨日のことがあるからか妙にドキドキしてしまう。
そしていつもより強く抱きしめられているのだ。
「ぉ…はよ、絢」
多分、あたしの顔は真っ赤だろうと予想できる。
はたから見ればイチャついてるカップルにしか見えない。
男だと意識しているからなのか、いつものようにあしらえなくなっている。
そんなあたしの考えも知らない絢は…
「いいなー。 今度から俺も一緒に登校していい?」
なんて言ったのだ。
魁迩は頷いていたが、あたしの見間違えでなければ一瞬顔をしかめていた。
「魁迩と二人っきりで登校するなんて…そんなに俺に妬かせたいの?」
あたしにしか聞こえない声で絢はそう呟くとあたしをぐいっと引き寄せた。
その時、頬に何か柔らかい感触がした。
「妬かせた罰」
そう言って絢は先に教室に行ったのだった。