小さな恋のうた
「お帰りなさい、あら今日はモモと一緒じゃないの?」

自宅の花屋に帰ると、母さんが花束を作りながらそう言った。


「うん、あいつ今日はデートだって…図書館に行ったよ。」

中学生になったとたん、あの子も一段とマセてきたわねって、母さんは笑った。


「あ、レン、まだお父さんにはこのこと話しちゃダメよ。」


わかってるよと答えて、店を通り抜け、奥の居間にあがった。

いつも用意してある、母さんの手作りのおやつを食べながら、一人で牛乳を飲んだ。


僕ももっと大きくなりたいな…さっきのイケメンみたく…


うちは両親ともそんなに身長は高くないから、ちょっとあきらめてるけど、それでもやっぱりでかい奴に憧れる。





「ちょっと公園に行って来る…」


制服を着替えて、グローブとボールを持ち、僕は一人で遊びに出かけた。


父さんがいれば、キャッチボールの相手をしてくれるんだけど、忙しいからそんなこと年に一度あれば良いくらい?

たまに公園に行くと、近所の同級生がいたりして相手をしてくれるから、今日もそれに期待していた…

でも今日にかぎって、誰も公園にはいなかった。



しょうがないか…


ボールを壁にあてて一人でやっていたら、見知らぬジイさんに声を掛けられた。
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