小さな恋のうた
順番に風呂に入って歯を磨いたあと、レンは僕のパジャマに着替えた。

そして僕の部屋に布団をひいて、ゴロゴロしながら眠くなるまでずっと二人でおしゃべりをした。


「ねえレン、さっきの話だけどさ、パパの事務所に入るってほんと?」


不意にそうきかれて、入る気はないよってすぐに答えた。


「なんで?もったいないじゃん。モモちゃんも嬉しそうだったよ。」


でも、僕はほんとにやる気がないんだよな。
だってめんどくさいじゃん。
今は好きなことやってたいし。



「ビトは自分のお父さんみたいになりたいの?」

そう聞いたら、まだよくわかんないって言われた。


「なんかさ、パパとかレンの父さんと同じ事務所に入ったら、モモちゃんもっと僕のこと見てくれるかなってさっきちょっと思ったんだ。
ほら、モモちゃんってさ、お父さんのこと大好きじゃん。ああいう人がいいのかなって思ったりしてさ。」


ああ、自分のお父さんより、僕の父さんに憧れてるってことか・・・
ちょっとこっちが照れくさくなる。



「レンはいいね、申し込んでもいないのに、スカウトにきたんでしょ?
そういうのってめったにないって聞いたよ。
うちのパパも、直接社長から電話きたっていってたけど、履歴書は自分で出したっていってたし。」
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