小さな恋のうた
「あれ?おじいちゃん、なにしてんの?」

何となくダンスに飽きて、一人でジイさんのとこに行って話し掛けてみる。




「ほら、みんなちゃんとレッスンしてるんだから、Youもちゃんと踊らないと駄目だよ。」

そう言われたけど、僕は付き添いだからいいよって、そのままジイさんの隣に座った。


「ねえ、なんで僕をスカウトにきたの?みんなの方がぜんぜんカッコイイじゃん。」

気になっていたので、そうきいてみたら、ジイさんも隣に座ってそうだなって話し始めた。


「私はね、Youのお祖父さんと知り合いだからね・・・
Youがあの人に似てるから、そばにおいときたかったのかな?」


へえ、うちのおじいちゃんって、お花の家元やってる方って聞いたら、そうだよって言われた。
母さんの方のおじいちゃんは、華道教室の家元をやってる。
もうすぐカズおじさんが、後を継ぐみたいだけど。



「あの人の娘と、奴が付き合ってるって知ったときは、ビックリしたよ。
なんだか嬉しくって、ホントはうちの事務所は20代で結婚なんて許さないんだけど、特別例外で許しちゃったんだよw」


でも、ビトの父さんもそうだよねって聞いたら、あいつらは事務所に内緒で勝手に入籍しちゃって、あの時は困ったよって笑って言われた。



「お祖父さんは元気かい?」

そうきかれて、もう元気すぎて、未だに家元をおじさんに譲らなくて大変だよって笑って言った。





「会長さんは、うちのおじいちゃんが好きだったの?」

何となくそんな気がしてそう聞いたら、そうだよって言われた。

ああ、男同士でもそういうのあるのかなって、ぼんやり思った。



ボーっとしながらみんなが踊ってるのを見ていたら、サボってるのがばれてちゃんとやれって怒られた。

部活帰りで疲れてたから、あんまり動きたくなかったんだけどね・・・
まあこれもビトとモモのためかなって思って、適当につきあって、一通りのレッスンが終わった。


ふと振り向くと、もうジイさんはいなくなっていて、なんかあそこに居たのは夢だったんじゃないかって思えた。


それにしても、不思議なジイさんだよな・・・

また会ってみたいな。
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