小さな恋のうた
レッスンが終わった後は、次の練習日とかを教えてもらって、また来るように言われた。

最後に僕とビトだけ呼ばれて、なにか紙を渡された。



「君達は履歴書がないから、これ書いてきて次の練習日に持ってきて。
ちゃんとご両親にも、許可をもらってくるんだよ!?」

ハイって適当に答えて、それを受け取った。


なんかよく読んだら、入所届みたいなやつで、あれ?今日がオーディションとかじゃなかったの?ってちょっととまどった。


「ねえ、もしかしてもう合格ってことになってない?」

ビトもそれを見てそういった。

「そうみたいだね・・・あのジイさんやっぱすごいんだな・・・」


鶴の一声で、入れちゃうもんなんだな。

もっと大変なものだって聞いてたんだけど。


もうすっかり暗くなっていたので、二人で早く帰ろうと思っていたら、スタジオの入り口のところで、一緒にレッスンを受けていた男子に声をかけられた。


「良いよなー親が有名で、トップアイドルだと。」

そんな嫌味を言われる。




「別に、俺は好きできたんじゃないもん。
安心しろよ、俺は入る気ないから。」

そいつにそういってやったら、どうだかって苦笑いされた。



「やる気なさそうにしてる奴にかぎって、急にデビュー出来たりするからな。
いくら頑張ったって、実力があったってさ、コネとかなきゃ駄目なんだよ。」



そいつは明らかに、僕なんかよりかっこよかったのに、そんなことを気にしてるんだって思ったら変な気分だった。

なんかよくわかんないや・・・
うちはあんまり芸能人の子供って感じで育ってないからな。



「しょうがないじゃん、親の仕事は僕が決めたわけじゃないし。
そのお陰で、僕は嫌な思いもいっぱいしてるんだ!!おまえになんか分かるわけないだろ!?」


いつもは穏やかなビトが、急にキツイ口調でそう言ったので、ビックリした。


「いいじゃん、言いたいやつには言わせとけよ・・・もう帰ろう・・・」


僕はビトをそうなだめて、そいつを無視して急いで帰った。

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