小さな恋のうた
地下鉄に二人で乗りながら、何となくさっきのジイさんの話をビトにも教えてあげた。

「へえ、なんかやっぱレンは特別なんだね。
なんかさ、色んなことが裏で繋がってるんだな。」

ホント、人の縁って不思議なもんだな・・・


あのジイさんと、うちのおじいちゃんと、昔なにがあったんだろう?
うちのおじいちゃんも、若い頃二枚目だったって言うから、男女問わずもてたのかな?
母さんや、カズおじさんみたく。



「ねえレン、次のレッスンの時も、ちゃんと付き合ってくれるよね?」

ビトは、急に不安そうに話し出す。
別にいいけどって言ったら、良かったって安心したように笑った。


「さっきのあいつ、なんか感じ悪いよな・・・
でも、きっとみんな必至でアピールして、オーディション勝ち抜いてきた奴らなんだろうな。」


こんなに簡単に入れちゃう俺たちって、やっぱやっかまれて当然だよなって言われて、そうだなってちょっと考えた。






うちに帰ると、珍しく誰もきていなくて、母さんが一人で僕の夕食の準備をしてくれていた。


「遅かったね、どうだった?」

母さんは相変わらず、笑顔でそう聞いてくれる。


「うん、なんかもう入所届出せとか言われちゃったよ、どうしよう・・・」


モモはって聞いたら、上で勉強してるよって言われた。

母さんはモモに聞こえないようにか、ちょっと声のトーンを落として話す。


「なんか書類もらってきたでしょ?ちょっと見せてみて。」


さっきもらった用紙を渡すと、母さんはじっとそれを読んで言った。

「それでどうするの?やってみるの?」


僕はかなり悩んでいた・・・

ビトに次も一緒にきてっていわれてたし、次に行く時はこれをちゃんと書いて持っていかなきゃいけない。
ってことは、入所しちゃうってことだもんな。


「ねえこういうのって、一回入ってから、一抜けたってすぐやめられるもんなの?」



母さんは難しそうな顔をした。

「私もよくわかんないけど・・・Jr時代ならまだすぐやめられのかもしれないけど、もしとんとん拍子にデビューさせられちゃったら、難しいかもね。」
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