小さな恋のうた
よくわからないから、お父さんに聞いてみなさいって、そんな風に言われた。




母さんが用意してくれたご飯を食べながら、さっきジイさんに言われたことを思い出して、そんな話しもした。

「うちの父さん、会長さんと知り合いだったんだ・・・
なんとなく、噂では聞いてたけどね。」


なんか僕だけしつこく入れって言ってくるから変だと思ったんだよねって言ったら、そういうことだったんだねって、ちょっと笑った。





「そういえばさ、母さん初めてお父さんとと会った時さ、まだ中学生だったんだよね・・・
あの時は、あの子だってだってわからなかったけど。」


なんか懐かしいなって、僕の顔を見ながらぼんやりと母さんは話しつづけた。


「なんかドラマ初主演だったやつで、たまたま私は知り合いがそのドラマのディレクターやってて見学させてもらってたんだ。
まだ演技もぜんぜんできてなくて、台詞も間違えまくってて、アイドルの子が適当にやらされてるんだって、かわいそうになっちゃった。」


へえ、父さんにもそういう時代があったんだねって、ビックリした。
今では演技派でドラマとか映画に出まくってるのにね・・・


「でもね、なんか目つきが凄く違ったのよ、他に出てる子役の子と。
それが凄いねって声をかけてあげたら、笑ってありがとうって言ってくれて、それだけだったけどね。」

後でそのドラマを見たら、ぜんぜん演技が変わっててビックリしたと、母さんは遠い目をした。



「それってうちにDVDあったっけ?」

あるよって言われたので、後で見てみようって思った。








そんなことを話していたら、父さんも帰ってきた。


「おかえりなさい、今日は早かったね。」

僕がそう言うと、疲れたようにその場に座り込んで、母さんが食事の用意をするのを待っていた。

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