小さな恋のうた
しばらくしたら、モモと母さんが上から降りてきて、一緒に何事もなかったようにお昼ご飯を食べた。


「レン、後でキャッチボールしに行く?」


父さんにそういわれて、行く行くって喜んでついていくことにした。


そういえば、うちはあんまり家族で外出とかしないな・・・
べつに、うちにいるだけでも楽しいからいいんだけどね。

せっかくの休みなんだから、どっか遠出してきたらって母さんに言われて、じゃあ多摩川のあたりまで行こうかって、父さんは笑った。








久しぶりに父さんの運転で、多摩川の河川敷に行った。

とびっきりいい天気で、凄く気持ち良い。
キャップを深くかぶって空を見上げると、日差しがまぶしくて目を伏せた。

暫く父さんと二人で、キャッチボールをした。




「なあレン、モモのことだけどさ・・・」

父さんはちょっとコントロールを間違えて、上の方にボールを投げた。
僕は慌てて後ろに下がりながら、何とかキャッチする。


「やっぱ、ビトのこと気になるの。」

僕もわざと高めに投げ返したら、父さんはキャッチしそこなってあわてて球を拾いに行った。

「大丈夫だよ、ビトは真剣にモモの事を思ってくれてるから。」
やっぱ相手がビトでも、気になるのって聞いたら、そりゃそうだよって思いっきり球を返してきた。


「まだ中学生って思ってたけど、もう中学生なんだよな・・・
最近の子供は、どうなってんだかわかんないしな。」

きっとそんなに変わらないんじゃないって、僕は答えた。


「でもさ、やっぱどんどん体つきとか変わってきちゃって、戸惑うよね。
やっと僕も毛も生えてきたし!」

そう言ったら、父さんは笑っていた。



女子もそうなんだろうねって言ったら、きっとそうだろうなって言われた。
なんか、女子の方が、革命的に変わってくんだろうな、色々。



「なんかちょっと淋しいな・・・」

父さんはそういった後、たまにはバッティングセンターにも行こうかって誘ってくれた。
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