小さな恋のうた
「ゴメンねビト・・・モモちゃんにばれちゃった。」

べべさんがビトにそう謝っている。



私はちょっとビトを睨んで、ぷいってそっぽむいて上の自分の部屋にあがって行った。


「モモちゃん、ゴメンね・・・ちゃんとしてから言おうと思ってて・・・」

ビトは慌てて私の後をついてくる。


ホントはそんなに怒ってなかったんだけど、ビトが私に内緒にしてたってのが、やっぱ気にいらない。

わざと大袈裟にドアを閉めて、ビトがどんな態度に出るのか様子をうかがった。


「ほんとごめんね・・・ちゃんと僕から説明しようと思ってたんだけど。
モモちゃん、ドアを開けてよ。」

ビトがドアをドンドン叩くから、私はうるさいなってちょっと不機嫌なフリをしながらゆっくりドアを開けた。


入っていいって聞いてきたから、いいよって言って、二人でベットに座った。


私はなんていっていいのか、ちょっと悩んだ。
さっきお母さん達に話したみたいに、素直に話せればいいんだけど、やっぱ本人には言い辛いもん・・・


「何で秘密にしてたの?
私に真っ先に相談してくれてもいいじゃん。」

何とかそれだけ言ったら、ちゃんと合格してからビックリさせようと思ったんだってビトはつぶやいた。


「僕さ、モモちゃんのお父さんみたいになりたかったんだ。
でもね、実際入ってレッスンはじめるようになって、目標はそれだけじゃなくなったよ。」

何でおじさんじゃなくて、うちのお父さんなのよって聞いた。



「だって、モモちゃん父さんのこと大好きでしょ。」



私のためなの?って思ったら、なんか複雑な気持ちになった。


「何でそうやって、遠くに行こうとするのよ。
やっと普通に会えるようになったのに、これじゃ前と同じになっちゃうじゃん。」
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