小さな恋のうた
私は涙が出そうになったけど、無理やりこらえた。


「モモちゃん、レンにはパパの事務所に入ればいいじゃんって、嬉しそうに言ってたじゃん。
僕は入っちゃ駄目なの?」


ビトは複雑な表情をして、私をじっと見つめていた。
なんかそれが凄くまっすぐだから、私は目を合わせられなかった。


「それとこれとは別でしょ?
ビトは、これからはずっとそばに居るよっていったじゃん!?
アイドルになんかなったら、あんまり会えなくなるし、ファンの子もいっぱいできるだろうし。」


私はちゃんと、毎日一緒に学校から帰ってきたり、一緒に勉強したり、お休みの日には遊びに行ったり、そういう普通の彼氏みたいな感じで一緒にいたかった。

でも、久しぶりに会ったビトは急に大人になっていて、いきなり抱きしめられた時には、昔みたいに懐かしいとは思えなくて、凄くドキドキして嫌だった。

去年会ったときと違う匂いがしたような気もしたし。

ビトは大人になっちゃったんだって、その時直感で悟ってしまったんだ。



ダメなんだよね・・・

私は、自分の体がドンドン大人になっていくのとか、たまに大人っぽい服を着せされらりとか、そういうのだけでも気持ち悪くなるんだ。


まだ待ってよって、自分の身体に言いたくなる。

でも、ドンドン胸も大きくなってくし、レンやお父さんと一緒に居る時だって、たまに恥ずかしいとか思っちゃうときもある。



まだちゃんと心の準備が出来てないのに、ビトはどんどん大人になってっちゃう、私をおいて。
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