悩める高校生時代
わけが分からず奏恵は教室を見回し、チョークぐらいでなぜそんなに笑えるのだろうか、と首を傾げた。
隣の男の子が「そういう事言ってやるなよ」と笑いながら奏恵の肩を小突いた。奏恵は依然として「?」という顔をしているので男の子は呆れたような声を出した。


「お前、マジでアレチョークだと思ってんの?」

「え?」

「頭垢だよ、頭垢」


よく見ろよ、と男の子は先生の頭を指さした。奏恵は目を細め少し身を乗り出したが――――、



「いい加減にしろや!!」



その怒鳴り声で奏恵の身が竦み、教室が静まり返った。

その声は先生ではなく、級長のものだった。
皆が一斉に級長に視線を送った。
級長は鬼のような顔をして、その視線の先には奏恵がいた。奏恵は虎に追い詰められた兎のように身を縮めた。

その状態がどのぐらい続いただろうか。級長は舌打ちして「うぜぇ………」と吐き捨てると、先生がその場を宥めるように笑った。


「明日から先生も気を付けるよ、ごめんね」


人が良い先生は生徒を咎める事は無く、授業を続けた。
けれど授業が終わるまで教室内の気まずい緊迫感が解かれる事は無かった。
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