悩める高校生時代
狩賀は自身の短髪をくしゃくしゃと毟った。


「少しは焦れよ。自分の将来に関わるんだぞ」

「ですね。じゃあ頑張ります」

「……本当にわかってるか?」

「はい。じゃあ次の授業始まるんで、行っても良いですか?」


奏恵は席を立つと授業道具を持って教室の戸に手を掛けた。
狩賀は何やら言いかけたが、何かが詰まったかのように声を発しなかった。

奏恵はふと思い出したように「あ、」と立ち止まった。
そして狩賀に向き直り、微笑んだ。




「先生の声って、私の好きな人とそっくり」




「……はぁ!?」
狩賀は驚いて頓狂な声を上げ、奏恵はまたけらけらと笑って出ていった。
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