天涯の花
天涯の花


シャワシャワシャワ…


暑くて脳が溶けそうだというのに、蝉たちの声はますます強くなっていく。

本物の泣き声なのか、鼓膜の奥での反芻なのか、それすらも曖昧だ。


高校三年生の夏。


自分も周りも、受験だ受験だと騒がれるのに飽いていた。

世間は夏休みに入り、通学路の人気も疎らだった。


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