DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 10 ― アップル ―
白い粉が雪のように床に落ちて来る。
深夜のキングデパートの展示室は、静かな闇に包まれていた。
非常灯の僅かな緑色の明かりの中で、展示された沢山の石たちも眠っているように見える。
ふいにカタンと音がしてドアが開いた。
同時に天井からの粉雪もやんだ。
「まったく……実際に動く俺たちのことを考えてくれって言いたいよな」
「ホントだよ。十分おきに巡回だなんて、聞いた事無いよ」
懐中電灯の光がサッと射し込む。
「おかげでテレビも見られやしない」
「それより便所にも行ってられないぜ」
二人の警備員はブツブツ文句を言いながら、左右に分かれて室内を一周する。
「プレス向けの会見でコメットのこと『あんなコソ泥は屁でもない』なんて言っちゃったもんだから、意地でも盗まれたく無いんだろ」
「だったら自分が徹夜して、ここで石に張り付いていればいいのにな」
「お、それいい考え」
二人は顔を見合わせて笑った。
「でもよ、きっと来るだろうな」
「何が?」
「コメットだよ。木村の奴があんなにボロクソに言ったんだ。絶対来ると思うぜ」
「そうだよな。あんなに大々的に新聞や雑誌に載ったもんな。コメットだって読んでるだろうし、盗もうと思っていなかった物でも盗みたくなるよな」
その場に足を止め、フゥッと溜め息をつく。
「……嫌だな」
「ああ。でも―― 田中は来るんならいつだと思う?秘宝展は金、土、日の三日間だろ?だから最後の夜は片付けられちまうから無いとして、開催日の前夜の今日と一日目と二日目の夜。計三日のうちいつ来ると思う?」
「そうだなぁ……二日目の夜かな」
「なんで?」
田中の答えに、木下は懐中電灯で自分の顔を照らしながら訊いた。
深夜のキングデパートの展示室は、静かな闇に包まれていた。
非常灯の僅かな緑色の明かりの中で、展示された沢山の石たちも眠っているように見える。
ふいにカタンと音がしてドアが開いた。
同時に天井からの粉雪もやんだ。
「まったく……実際に動く俺たちのことを考えてくれって言いたいよな」
「ホントだよ。十分おきに巡回だなんて、聞いた事無いよ」
懐中電灯の光がサッと射し込む。
「おかげでテレビも見られやしない」
「それより便所にも行ってられないぜ」
二人の警備員はブツブツ文句を言いながら、左右に分かれて室内を一周する。
「プレス向けの会見でコメットのこと『あんなコソ泥は屁でもない』なんて言っちゃったもんだから、意地でも盗まれたく無いんだろ」
「だったら自分が徹夜して、ここで石に張り付いていればいいのにな」
「お、それいい考え」
二人は顔を見合わせて笑った。
「でもよ、きっと来るだろうな」
「何が?」
「コメットだよ。木村の奴があんなにボロクソに言ったんだ。絶対来ると思うぜ」
「そうだよな。あんなに大々的に新聞や雑誌に載ったもんな。コメットだって読んでるだろうし、盗もうと思っていなかった物でも盗みたくなるよな」
その場に足を止め、フゥッと溜め息をつく。
「……嫌だな」
「ああ。でも―― 田中は来るんならいつだと思う?秘宝展は金、土、日の三日間だろ?だから最後の夜は片付けられちまうから無いとして、開催日の前夜の今日と一日目と二日目の夜。計三日のうちいつ来ると思う?」
「そうだなぁ……二日目の夜かな」
「なんで?」
田中の答えに、木下は懐中電灯で自分の顔を照らしながら訊いた。