DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
 そして翌日――

「それで……いったいどういう事だったんです?」

 海へ突き出した崖の上に佇む白い洋館。

 煌めくシャンデリアの下のソファーに、六人はゆったりと腰掛けていた。

「まんまとやられたと言う事だよ、神部君。石と一緒に持ち去られた宝飾品は、全て一階の広場に置かれた植木にオーナメントとして飾られていたそうだ。まるでクリスマスツリーのようにね」

「じゃあ、奴は石を手に入れた後も、暫くの間あの建物の中を自由にうろついていたという事ですか?」

 一番若い藪澤和也がソファーへ凭れ、脚を組む。

「ああ、そういう事になるな」

 影山は頷き、苦笑した。

 こんな事になるなら、記者会見の時あんなにコメットを刺激するのではなかった。

 あれがあったから影の石のみならず、他の大切な石まで失う事になったのだ。

 そんな影山をチラリと見て、神部はブランデーグラスに琥珀色の液体を注いだ。

「展示室の監視カメラの映像は、ちゃんとチェックしていたんでしょう?」

 ブランデーのグラスを掌で包み、ゆっくりと回す。

「もちろんだよ。警備員はこちらの指示どおり十分おきに巡回していたし、モニターも常にチェックしていた」

「だったら、影山さん。どうやって奴は石を持って行ったんですか?」

 赤峰の問い掛けを聞きながら、神部はそれを口に運びゴクリと喉に流し込んだ。

「警備員はビデオの映像を見せられていたんだよ」

「ビデオの映像?」

『リンゴは白雪姫のもとへ運ばせていただきます』と書かれたカードを写した写真を指で弄びながら、神部が影山に目をやる。

「ああ。まず監視カメラの電波を傍受して、何でもない状態の展示室を録画する。そして今度はその映像の電波を警備室のモニターに飛ばし、その隙に天井から侵入して石を持ち去った」

「でもカメラは二十台だろう?だったらビデオも二十台必要じゃないか。そんな大掛かりなこと――」

 身を乗り出した米村の言葉を遮って影山が続ける。

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