DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
(分割払いで犬を買う―― か。一回目は頭の分で、二回目は耳の分とかいう感じかな?それとも一回目は頭蓋骨の分で、二回目は背骨で……)

 クレジットカードを持たない未央には、電化製品やブランド物の洋服と同じようにペットをカードで買うということは、酷くみょうなものに思えた。

 考えている様子の未央に頼子が訊く。

「犬は駄目なの?」

「え――?あ、いいえそういうわけじゃ」

「良かった。駄目じゃないのね。駄目って言われたら、どうしようかと思ってたの」

 頼子が嬉しそうに顔を覗き込むと、未央はわざと咳払いをして黒縁の眼鏡をなおした。

「それで、リトルはどんな犬なんですか?」

「ゴールデンレトリバーよ」

「え?」

「ほら、よく芸能人が飼ってるやつよ」

(嘘……ゴールデンレトリバーだなんてでっかいじゃないの。小さくたたむってわけにもいかないし。それに――)

「あの……リトルは大人しいですか?彼女は私を知らないわけだけど、噛んだりはしません?」

 未央は最も気になっていた事を訊いた。

 犬を見つけたは良いが、噛まれたのではどうしようもない。

「大丈夫と思うわ。……たぶん」

「たぶん?」

 頼子の言葉を復唱して不安げに頼子を見る。

「男の人はね、彼以外は絶対駄目みたいなの。彼が友人を連れて来たとき、お尻に噛み付いて大変だったから」

「虐めたからとかじゃなく?」

「どうかな……。でも五人来て、中には犬が大好きって人も居たけど、五人ともやられてたわよ」

「嘘……」

 表情の強張った未央に、頼子が慌てて続ける。

「あ、でも女の子が来たときは全く平気だったから」

(ああ、だから『たぶん』なのか)

 未央は納得した。

 いくら活発といっても、自分は男では無い。

 頼子の話が確かなら、噛まれる理由は無いということだ。

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