DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「そう。これ、私の犬じゃないのよ。私の彼の犬なの」
足下で大人しく座っている犬を見ながら女性が続ける。
未央はその女性が次に何を言うのかをじっと待った。
「今度ね、一緒に住む事にしたんだけど、この犬邪魔で――」
「邪魔って……そんな酷い言い方!」
犬の事を少しも考えない自分勝手な言葉に、未央は声を上げた。
「朝から晩まで彼にベッタリでまるで恋人よ」
「だからって、捨てるなんて可哀想じゃないですか」
明らかに怒っている表情の未央に、女性がフッと笑う。
「あなたじゃ分からないか」
「何がですか?何が分からないっていうんです!」
未央はムッとして、少し強い口調で答えた。
だいいち飼っている犬を邪魔だとか捨てるとか言う人の気持ちなんて分かるはずも無いし、分かりたくも無かった。
「この犬ね、私と彼が愛し合ってるときもベッドに乗っかって来るの。まるで邪魔をするみたいに」
途端に未央は真っ赤になった。
「で……も、あの、その――」
「あら、少しは分かったみたいね。良かったわ」
言い淀んだ未央に女性が続ける。
「だから邪魔なのよ」
未央は返す言葉がなかった。
仕方なく黙っていると、女性はポケットから煙草を取り出して火をつけた。
「こんな大きな犬、貰ってくれそうな友だちも居ないし、保健所に持って行くのも手続きとかが面倒だし。捨てるしか無いのよ」
「そんな……」
「私はもう絶えられないの!我慢できないの!」
(なんて自分勝手なんだろう?この子には何の罪も無いのに。ただ飼い主を大好きなだけなのに……なのにまるで物みたいに捨てるとか持って行くとか)
悲しくなった。
腹が立った。
「だったら私が飼います!」
思わず叫んでから未央はハッと気付いた。
足下で大人しく座っている犬を見ながら女性が続ける。
未央はその女性が次に何を言うのかをじっと待った。
「今度ね、一緒に住む事にしたんだけど、この犬邪魔で――」
「邪魔って……そんな酷い言い方!」
犬の事を少しも考えない自分勝手な言葉に、未央は声を上げた。
「朝から晩まで彼にベッタリでまるで恋人よ」
「だからって、捨てるなんて可哀想じゃないですか」
明らかに怒っている表情の未央に、女性がフッと笑う。
「あなたじゃ分からないか」
「何がですか?何が分からないっていうんです!」
未央はムッとして、少し強い口調で答えた。
だいいち飼っている犬を邪魔だとか捨てるとか言う人の気持ちなんて分かるはずも無いし、分かりたくも無かった。
「この犬ね、私と彼が愛し合ってるときもベッドに乗っかって来るの。まるで邪魔をするみたいに」
途端に未央は真っ赤になった。
「で……も、あの、その――」
「あら、少しは分かったみたいね。良かったわ」
言い淀んだ未央に女性が続ける。
「だから邪魔なのよ」
未央は返す言葉がなかった。
仕方なく黙っていると、女性はポケットから煙草を取り出して火をつけた。
「こんな大きな犬、貰ってくれそうな友だちも居ないし、保健所に持って行くのも手続きとかが面倒だし。捨てるしか無いのよ」
「そんな……」
「私はもう絶えられないの!我慢できないの!」
(なんて自分勝手なんだろう?この子には何の罪も無いのに。ただ飼い主を大好きなだけなのに……なのにまるで物みたいに捨てるとか持って行くとか)
悲しくなった。
腹が立った。
「だったら私が飼います!」
思わず叫んでから未央はハッと気付いた。