DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
(マズイ!私ったらとんでも無いこと言っちゃった――)

 いつも、よく考えて行動しろと千聖に注意されているのに。

 しかしもう後の祭りだ。

 口から出た言葉は、どんなに頑張っても回収不能だ。

「あら、そう?良かったわ。じゃあお願いね」

 その言葉を待っていたとばかりにリードを無理やり未央に手渡し、女性は犬の顔を覗き込んだ。

「バイバイ、リトル。短い付き合いだったわね。良二は私が幸せにするから、あなたはこのお姉さんと仲良くやるのよ」

「え?今のこの子の名前――」

「ああ、そうか。名前言っておかなくちゃね。この犬、土屋リトルって言うの。メスよ。ま、名字なんてどうでもいいんだけど」

(リトル?良二?土屋?それって……)

 未央は耳を疑った。

 どれも聞いた事のある名前だったからだ。

 しかも、全て今回の依頼人の口から。

(それって頼子さん……の?)

「じゃあ失礼するわ」

「あの――!」

 慌てて呼び止めた未央に背中を向け、女性はさっさと駐車場に向かって行ってしまた。

「嘘……あなたがリトル?」

 目が合うと、犬は尻尾をパタパタと振って急に立ち上がった。

 肩に手を置いて、よろめいた未央の顔を舐める。

「こんなのってあり?」

 思いも寄らない標的の回収に、未央はしばらく呆然と立ったままだった。




…★……★……★…



☆NEXT☆


――フゥ……

「え―― や……ヤダ、千聖ったら何よ。耳元に息なんか吹きかけないで」

「はあ?」

「あ―― くすぐったいってばぁ。ダメ、そんな事……」

「何が?」

―― ペロ……

「ぁん―― ダメだったら」

「クゥン……」

「え?―― な、何だリトルだったの。私はまたてっきり千聖が襲っ――」

「俺が何だって?」

「―― 何でもない」

  MISSION 12
   ― 猛犬リトル ― へ続く。


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