DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
一方、ダイニングでそんな会話がされているとは知らない未央は、二階のテラスに居た。
明かりの消えている大きな窓に張り付くようにして中を覗く。
その部屋の壁にも、またいくつもの絵画が飾られていた。
(それにしても、凄い数の絵ね。いったい何点くらいあるんだろう。でも、大きい物ばかり。森下さんの絵みたいな小さな物は別の部屋なのかな)
そう思った瞬間――
(うわっ――!)
何となく掴んだレバーが動いて窓が開いた。
「あぁ……驚いた。まさか開いてるなんて……」
辺りをキョロキョロと見回す。
人影は全く無い。
「ちょっとだけなら平気よね。せっかくここまで来たんだし――」
未央は中も調べてみる事にした。
静かに部屋に入る。
一応見回してみたが、未央が想像していたとおり監視カメラは無いようだった。
今度は廊下へ続くドアを開けて、そっと外を覗いた。
幅一間半ほどもある広い廊下には真っ赤な絨毯が敷き詰められていて、両側の壁には洒落た形のライトが約二メートル置きに付いている。
その壁のあちこちにも絵があった。
(赤峰って人はよっぽど絵が好きなのね)
スルリと廊下に出る。
未央はふと目に付いた奥の部屋に向かって歩き出した。
ドアの前に立ち、ノブを掴む。
真っ暗なその部屋に廊下の明かりが差し込むと、真っ直ぐに正面の壁に目をやった未央はニッコリと微笑んだ。
(あった……あの絵だわ)
ちょうどその時、何処からか足音が聞こえて来た。
ゆっくりこちらへ近付いて来る。
未央は直ぐにドアを閉め、急いでさっきの部屋に戻った。
ベランダから下へ身軽に飛び降りる。
そして壁に絡んだ蔦の陰に身を隠すと、ホッと息を吐いた。