DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「くっ――!」
「ガウゥウ!グゥウウ――!」
「いいぞ!ケルベロス!」
主人の声に押され、しっかりと食い付いたまま激しく首を振る。
「う、あぁあああ――!」
分厚く巻きつけた上着を突き抜けた鋭い牙に、千聖は堪えきれずに叫び声を上げた。
反射的に右手に握っていた金属の棒で殴り付けると、ギャウンと鳴いてケルベロスは一旦千聖から離れた。
次の攻撃に備え、千聖も直ぐに身体を起こす。
左腕に巻かれた上着が、見る見る血に染まる。
痛みで腕が疼き、身体中から汗が滲み出す。
赤峰は、テラスから身を乗り出して千聖を見下ろした。
「どうしたコメット?辛そうだな。助けてやろうか?」
「……勝手に言ってろ」
「おまえに会ったら訊こうと思っていた事があるんだ。何故そんなに【影】に拘るのか?何がおまえをそうさせるのか?いったい何を知っているのか?」
ケルベロスに目をやったままの千聖に、赤峰は訊いた。
「そんな事あんたに答える必要は無い」
「そうか」
下から上ってきたコメットの声に肩を竦める。
それからもう一度口を開いた。
「取引をしないか?俺の【影】を返せよ。そうすれば命だけは助けてやってもいいぞ」
「あんたの言う事なんて信じられるか。石を取り返してもあんたは俺を殺す気だ。―― 【影】は渡さない。たとえ殺されてもね」
吐き捨てるように返された言葉に、赤峰は苦笑した。
図星だったのだ。
「ガウゥウ!グゥウウ――!」
「いいぞ!ケルベロス!」
主人の声に押され、しっかりと食い付いたまま激しく首を振る。
「う、あぁあああ――!」
分厚く巻きつけた上着を突き抜けた鋭い牙に、千聖は堪えきれずに叫び声を上げた。
反射的に右手に握っていた金属の棒で殴り付けると、ギャウンと鳴いてケルベロスは一旦千聖から離れた。
次の攻撃に備え、千聖も直ぐに身体を起こす。
左腕に巻かれた上着が、見る見る血に染まる。
痛みで腕が疼き、身体中から汗が滲み出す。
赤峰は、テラスから身を乗り出して千聖を見下ろした。
「どうしたコメット?辛そうだな。助けてやろうか?」
「……勝手に言ってろ」
「おまえに会ったら訊こうと思っていた事があるんだ。何故そんなに【影】に拘るのか?何がおまえをそうさせるのか?いったい何を知っているのか?」
ケルベロスに目をやったままの千聖に、赤峰は訊いた。
「そんな事あんたに答える必要は無い」
「そうか」
下から上ってきたコメットの声に肩を竦める。
それからもう一度口を開いた。
「取引をしないか?俺の【影】を返せよ。そうすれば命だけは助けてやってもいいぞ」
「あんたの言う事なんて信じられるか。石を取り返してもあんたは俺を殺す気だ。―― 【影】は渡さない。たとえ殺されてもね」
吐き捨てるように返された言葉に、赤峰は苦笑した。
図星だったのだ。