DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「商談は不成立か。なら、仕方が無い。【影】の回収は、おまえがただの肉の塊になってからにするよ。ケルベロス―― 殺れ!」
赤峰の言葉に答え、ケルベロスが唸り声を上げた。
飛び掛かって来るケルベロスの口を目掛けて、掴んでいた棒を突き出す。
ケルベロスが棒に食い付き、奪い取ろうとするように首を振る。
それを振り払おうと、千聖が力一杯棒を振り切る。
一旦銜えていた棒を離し、飛び退いたケルベロスが再び向かって来る。
次の瞬間、頭を目掛けて振り切った棒をスッとかわしてケルベロスが視界から消えた。
「な―― !?」
直後、空から降ってきた黒い塊が目の前を過ぎり、それとほぼ同時に胸元に衝撃を感じて千聖は芝生に倒れた。
握っていた棒が手を離れ、少し離れた場所に転がる。
「ガウゥウウッ!」
引き裂かれたような真っ赤な口が首に迫る。
丸腰でドーベルマンに対峙すれば、人間は勝てない。
いつか目にしたそんな言葉が頭を過ぎり、千聖は思わず顔を背けて目を閉じた。
ところが――
何を思ったのか、ケルベロスはふいにピタリとその動きを止めたのだ。
今、組み敷いている相手の首筋や、髪の匂いを嗅ぐ。
そのまま千聖の上から降りても、しきりに身体の匂いを嗅ぎ続けた。
千聖はケルベロスを刺激しないように静かに起き上がり、腕に巻いてあった上着を外した。
その様子に赤峰が叫び声を上げる。
「どうしたケルベロス!何をしている !?」
だがその声も聞こえないのか、ケルベロスはただ匂いを嗅ぎながら千聖の周囲を回り続けていた。
その時、茂みの方でカサッと音がした。
ケルベロスは直ぐに反応して、そちらに目をやった。
赤峰の言葉に答え、ケルベロスが唸り声を上げた。
飛び掛かって来るケルベロスの口を目掛けて、掴んでいた棒を突き出す。
ケルベロスが棒に食い付き、奪い取ろうとするように首を振る。
それを振り払おうと、千聖が力一杯棒を振り切る。
一旦銜えていた棒を離し、飛び退いたケルベロスが再び向かって来る。
次の瞬間、頭を目掛けて振り切った棒をスッとかわしてケルベロスが視界から消えた。
「な―― !?」
直後、空から降ってきた黒い塊が目の前を過ぎり、それとほぼ同時に胸元に衝撃を感じて千聖は芝生に倒れた。
握っていた棒が手を離れ、少し離れた場所に転がる。
「ガウゥウウッ!」
引き裂かれたような真っ赤な口が首に迫る。
丸腰でドーベルマンに対峙すれば、人間は勝てない。
いつか目にしたそんな言葉が頭を過ぎり、千聖は思わず顔を背けて目を閉じた。
ところが――
何を思ったのか、ケルベロスはふいにピタリとその動きを止めたのだ。
今、組み敷いている相手の首筋や、髪の匂いを嗅ぐ。
そのまま千聖の上から降りても、しきりに身体の匂いを嗅ぎ続けた。
千聖はケルベロスを刺激しないように静かに起き上がり、腕に巻いてあった上着を外した。
その様子に赤峰が叫び声を上げる。
「どうしたケルベロス!何をしている !?」
だがその声も聞こえないのか、ケルベロスはただ匂いを嗅ぎながら千聖の周囲を回り続けていた。
その時、茂みの方でカサッと音がした。
ケルベロスは直ぐに反応して、そちらに目をやった。