DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
(でも、でも違うかもしれない。全部偶然かもしれない。こんなの私の空想なんだから、ただの空想なんだから……)
けれども否定しようとすればするほど千聖がコメットであると思えて来て、未央は頭を抱え込んだ。
(調べよう。千聖のこと。【影】のある石の事。そうすれば分かるはず……千聖がコメットなのか、そうでないのか)
「おい、何してる」
「きゃっ!」
突然の声に、未央は思わず飛び上がった。
振り向くと、バスローブのままの千聖が缶ビールを片手に立っていた。
思わず手にしていた新聞を後ろへ隠す。
千聖は、訝しげに眉を顰めてから口を開いた。
「いつ帰って来た?」
「あ、ついさっき」
「もう日付が変わってる。こんなに遅くまで出歩いてるなんて、あんまり感心しないな」
軽く眉間に皺を寄せ、ビールを持った手で髪を掻き上げる。
「ごめんなさい」
「そんな高校生らしくない事やってるから、あんな――」
そこまで告げて、千聖は後の言葉を呑み込んだ。
「――?何?」
「ごめん。キツイ言い方して」
突然の言葉に、未央は驚いて千聖を見つめた。
千聖の口からそんな言葉が出ようとは、思ってもみなかったのだ。
「本当は心配してたんだ。あんたが――」
一旦言葉を止める。
それから千聖は、未央から目を逸らして呟くように続けた。
「あんたに何かあったんじゃないかと思って」
「千聖」
「でも良かった。何でもなくて」
それから視線を戻し、狐に摘まれたような顔で立っている未央に気付いてハッと我に返った。
もう一度顔を背ける。
「で、こんな所で何してるんだ?」
今度は古新聞を背に立っていた未央に訊いた。