DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 17 ― 繋がった糸 ―


「おい!未央、未央ってば!」

 未央はポンと肩を叩かれて、初めて自分が呼ばれていた事に気付いた。

 中央図書館に向かう途中だ。

「響。なに?どうかした?」

「『どうかした?』じゃ無いだろ?さっきからずっと呼んでるのに」

「あ、ごめん。考え事してて――」

 未央は頭を掻いて、ペロリと舌を出した。

 自転車を押しながら響が問い掛ける。

「何処行くんだ?」

「図書館へ」

「へえ珍しいな。どういう風の吹き回しだ?」

 目を見張った響に、未央は肩を竦めた。

「響に言われたく無いな」

 二人は顔を見合わせて笑った。

「ちょっと調べたい事があって」

「だったら、俺が後ろに乗せてってやるよ」

「ホント?ラッキー。じゃあお願いね」

 未央が後ろに飛び乗ると、響の自転車は図書館に向かって走り出した。

 赤峰の屋敷でコメットに遭って以来、未央はコメットについての新聞記事をしらみ潰しに調べていた。

 そこで分かったのは――

 コメットは、半年ほど前に現れた宝石専門の泥棒である事。

 人を殺したり、怪我をさせたりしていない事。

 赤峰邸の事件までは、一度も姿を見られていなかった事。

 近頃、影のある石を集めている事。

 影のある石は今までに四つ盗まれていて、その持ち主は藪澤和也・米村聡吉・影山十三・赤峰尚人の四人である事。

 の、五点だった。

 けれどもこれだけでは千聖とコメットの接点が見付からず、未央は悩んでいた。

 別に千聖がコメットだと決め付けたいわけでも無かったが、でも――



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