DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「で、何を調べるんだ?」
図書館の机に鞄を置くと、響が小声で話し掛けてきた。
「うん……今調べる事を考えてるとこ」
「なんだ?何か調べたい事があって調べに来たんじゃ無いのか」
「まあ―― 古い新聞記事を調べていたんだけどね」
響に突っ込みを入れられ、未央は苦笑いした。
「ふぅん。古い記事ねぇ……。俺も見てみようかな。自分の生まれた日の記事なんて面白そうだから」
「うん、いいかもね」
未央が肯くと、響は沢山ある本棚の方へ消えていった。
椅子に腰を下ろし、調べ物をしているという自分の発言が尤もらしく見えるように、取り敢えず鞄からノートと筆記用具を取り出す。
「あったぜ」
暫くしてニコニコしながら戻って来た響の手には、分厚いファイルが握られていた。
さっそくそれを開くと、十八年前の新聞は全体の感じや写真に映っている人の服装が違っていて、何かよその国の物を見ているように思えた。
広告欄も今では常識になっている物が、『画期的な発明!』などと謳われていて結構笑える。
「未央、これ見て見ろよ」
響が記事を指さす。
「なぁに?」
「俺、この事件知ってるよ」
「えっ !? 見たの !?」
「馬鹿、見るわけ無いじゃん。生まれた日だぜ」
「そうか」
未央がペロリと舌を出す。
「テレビのさ、衝撃の何とかなんていう番組あるじゃん。あれで見たんだよ。自分の誕生日だったからしっかり覚えてたんだ。今度は未央の生まれた日も見てみようぜ」
微笑んだ響が、別のファイルを開く。
「未央のは……あった。これ――」
響が指をさした夕刊のトップ面には、大きく結婚式の写真があった。
「へぇ……トップアイドルの結婚式だってよ」
「この人見た事ある。今もテレビ出てるよね」
「出てる出てる。そういえばうちの親父、この人のファンだよ」
「今でも綺麗だもんね。でも、離婚したって言ってたわ」
今度は別の新聞に目をやる。