DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
目に飛び込んで来たのは、飛行機の墜落事故の記事だ。
「あ、俺これも知ってる」
「響って結構いろんな事知ってるんだ」
未央の尊敬の眼差しに、響は胸を張った。
おのずと舌も滑らかになる。
「これってさ、凄い事故だったのに生き残った人が居たんだよ。その中に小学生の女の子が居て―― 両親と一緒に乗ってて、両親は死んだんだって言ってたな。この子、長期入院中病院で親切にしてくれた看護婦さんに憧れて、自分も看護婦になったんだ」
「へぇ……大変だっただろうね。独りぼっちになっちゃって――」
(え?―― 独りぼっち?)
『両親が急に行方不明になって、遺体も何も無いのに乗船名簿に名前があったというだけで突然死んだと言われて、独りぼっちになって、それじゃあさぞかし淋しいでしょうね。可哀想に。そう思って、ここに居るってか!』
不意に未央の脳裏に千聖の言葉が浮かんだ。
(船の事故?いったいどんな?)
当時、隣に住んでいた響なら知っているかもしれないと思えて、未央は恐る恐る訊いてみる事にした。
「ねぇ、響」
「ん?」
「千聖のさ、両親が亡くなった船の事故っていつだったの?」
「あれかぁ……ん――」
腕を組んで、響は視線を上へ向けた。
「ん………」
「ね、思い出して」
「待てよ……俺が中一で、確か夏休みだったと思うから――」
「五年前の七月の後半か、八月ね」
急いで立ち上がり、未央はファイルを持って来た。
「響も捜して」
言うなり七月分を響の前へドカンと置く。
「へいへい……随分熱心じゃん」
響は不満げに口を尖らせ、表紙に手を掛けた。
しかし響の不満の声も、未央には聞こえなかった。
今の未央の頭の中は、千聖とコメットを繋ぐ手掛かりを見付け出す事でいっぱいだったのだ。