DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
あちこちウロウロしていると、ふいに足下で普段なら気付かないような微かな音がした。
足を止め、もう一度踏んでみる。
また小さな音がした。
「何だろう?」
何となく捲った絨毯の下、床板に四角い切れ目が入っている。
軽く手を握り板を叩く。
他の部分とは明らかに違う音がした。
(下に空洞がある)
好奇心に押されて板を剥がすと、今度は平たい箱が。
取り出して蓋を開ける――
「あっ――!」
未央は生まれて初めて見る光景に思わず叫んで、口に手を当てた。
箱の中は細かく仕切られていて、キラキラと輝くいくつもの宝石がずらりと並んでいたのだ。
そのたくさんの石の中には、未央があの日米村の屋敷で見たウサギの影の石もあった。
「【ゴールデン・ディアー】【アップル】嘘……これって――」
その時、玄関のドアがバタンと閉まる音が響いた。
驚いて、ハッと我に返る。
考える間もなく急いで箱を元の場所に戻し、絨毯を直す。
ドアに駆け寄り明かりを消し、未央は耳を澄ました。
洗面所の方で水の音がしている。
千聖がいつもの習慣で手を洗っているのだ。
(今のうちだ)
未央は急いで、しかし静かに部屋を抜け出しリビングへ出た。
ソファーに座って新聞を手にしてテレビ覧を見ているふりをする。
すぐに千聖がリビングに入って来た。
「あ、お帰りなさい」
「………居たのか」
(良かった。部屋に明かりがついてるの見られてないや)
「さっき帰ったとこ」
答えながら千聖の視線を避けるように、未央はまたテレビ欄へ目を向けた。